LightWave で線画出力:はじめに:3Dモデルからモノクロ線画を出力する

3DCG 初心者が LightWave を使って、3Dオブジェクトから漫画やイラストに活用できる線画をレンダリングする手順を調べたのでまとめていく。なお、ここで使用している LightWave のバージョンは9.6の日本語版である。また、3DCG全般や紹介する各ツールの使い方などについて詳しいわけではないので、記述における間違いや不足などがあれば遠慮無くご指摘を。

前提となる3DCG基礎知識

レンダリングとは

3DCGにおけるレンダリングとは、3Dオブジェクトやそのテクスチャ、光源の設定情報などを基に、画像として描画・出力すること。3Dモデルをソフト上で写真に撮って画像化することだと思えばよい。ただし、その「写真」を撮るためにはコンピュータでの計算が必要になる。

デジタル漫画・イラスト制作者へ向けてさらに付け加えると、ComicStudio EX(以下コミスタ)における、3D素材から輪郭線とトーンを出力する3DLT機能(LT は Line & Tones の略)や、CLIP STUDIO PAINT EX(以下クリスタ)における3DのLT変換機能も、このレンダリングをおこなうことで線を抽出している。ここでは、この線画抽出を LightWave のみでおこなうことを主な目的とする。

LightWave は Modeler と Layout という2種類のアプリケーションで構成されているのが特徴だが、レンダリングをおこなえるのは Layout である。

セルシェーディング(トゥーンシェーディング)とは

レンダリングには、スキャンライン、レイトレーシングラジオシティなどいくつもの手法があるらしいが、それらについてここでは触れない。漫画やイラスト用途の線画を得るなら、一般的にセルシェーディングという手法を使う。これはトゥーンシェーディングとも呼ばれ、線画とベタ塗りの色によりセルアニメのような画がレンダリングされる手法である。

ちなみにセルシェーディングの「セル」はセルアニメに由来し、トゥーンシェーディングの「トゥーン」はアニメーションという意味で使われるカートゥーン (cartoon) の短縮形に由来する。また近年はセルアニメ調に見えるような3DCG作品に対して、セルルックという語が使われることが多い。

シェーディングとはレンダリング処理の一部で、物体の陰影を計算すること。また、レンダリング用ソフトウェアのことをレンダラー(またはレンダリングエンジン)と呼ぶが、中でもセルシェーディングをおこなうレンダラーを、セルシェーダー(またはトゥーンシェーダー)と呼ぶ。

アニメ『SF新世紀 レンズマン』(1984パイロット版制作時にセルシェーディングを世界で最初に実践したという大口孝之氏によると、商業作品で初めてセルシェーディングを導入したのは映画『ライオン・キング』(1994)でヌーの大群を描いたカットらしい。

追記:このような逸話を目にしたので紹介しておく。


ノンフォトリアルとは

レンダリングにはノンフォトリアリスティック・レンダリング (Non-Photorealistic Rendering; NPR) という分野がある。写実的という意味のフォトリアルに対し、ノンフォトリアルは非写実的という意味。写真のようにリアルではないということから、つまりNPRは「絵のようになる」レンダリング技術のこと。セルシェーディング(トゥーンシェーディング)はこのNPRの一種となる。NPRには他にも、水彩画や水墨画のような画をレンダリングする手法などがある。

LightWave で線画を出すには

LightWave ではいくつものシェーダー(プラグイン)が使えるが、セルシェーディングに利用できるものはおそらく以下のみ。これらを用いて線画やセル調表現を出力するのが一般的である。

  • Super Cel Shader (スーパーセルシェーダー)
    • 標準搭載。何が Super なのかというと、以前あった CelShader というシェーダーの改良版だから。4段階の階調で色分けする。
  • BESM (ビーイーエスエム)
    • 標準搭載。伝統的な漫画調のセルシェーディングをおこなうシェーダー。BESM は Big Eyes, Small Mouth(大きな目と小さな口)の頭文字語で、日本漫画・アニメの特徴に由来。
  • unReal Xtreme2 (アンリアル・エクストリーム2)
  • AS SimpleCell (エーエス・シンプルセル)※2018-09-19追記
  • サブリメイションセルシェーダー ※2018-09-19追記

線画を出す方法は他にもあるが、それらを含めて手順や情報をまとめていこうと思う。

最低限の事前準備として、Layout 上でオブジェクトやカメラを動かして、欲しいアングルをカメラビューに捉えられるようにしておくこと。画面左下の[オブジェクト]や[カメラ]の各ボタンを選択し、[変形]タブ>[移動]>[移動]と、[変形]タブ>[回転]>[回転]を組み合わせることで動かせる。また、サーフェイスの概念とその大まかな設定方法についても知っておく必要がある。

余談

自分が LightWave に手を出したきっかけは、コミスタの3D素材に使われていた標準的なファイル形式が LightWave Object (.lwo) という形式だったためである。しかし購入後、あまりにもわからないことが多すぎることからすぐに挫折し、ソフトは数年間塩漬けだった。

もともと 3DCG は写実的な画を作るために使われることが多いようで、3Dソフトに搭載されているレンダリング機能も、そのためのものが多い。また、統合ソフトでは 3DCG でアニメーションを作ることも前提とされている。一方、漫画やイラストへ活用するためだけなら覚えるべき知識・操作は非常に限られたものに過ぎず、静止画なのでアニメーションも不要である。しかしマニュアルやチュートリアル、市販の入門書などはそういったユーザーを主な対象にしていないため、何をどうすればいいのかが非常に分かりにくいことが、専門用語(そして英語も)の多さと相まって、絵を描く人間が 3DCG を活用する際のハードルの高さへ繋がっているように思う。

これらの記事は、自分の備忘録であると同時に、同じような初心者の無駄な苦労を軽減させることも目的としている。書きかけの記事でも最低限、情報への参照先だけは記してあるので、一助となれば幸いである。