LightWave で線画出力:応用編5:2点透視図法の画を出力する

LightWave v9.3 から搭載されたカメラ機能「Shift Camera」を利用すれば、2点透視図法で描いたような画が出力できる。

この Shift Camera は、パースペクティブカメラの画から垂直方向のパースを消した画を作るカメラで、建築物の外観レンダリングなどに使用されることが多い。現実のカメラで言うシフトレンズ、フィルムシフト、チルトシフトレンズなどと呼ばれているものと同様の効果を得るものらしい。3ds Max では「カメラ補正(あおり補正)モデファイヤ」と呼ばれる機能にあたるようだ。

比較のためにまず、パースペクティブカメラ(たぶん初期設定になっているカメラ)で白黒の線画をレンダリングしてみる。

セルシスの『3Dデータコレクション』素材「マンション01」(ComicStudio EX4 には最初から入っている)を対象に、線画出力にはシェーダープラグインの unReal Xtreme2 を使用した。以下では簡単に済ませるが、unReal Xtreme2 の使い方の詳細は「基礎編1:unReal Xtreme2 を使う」を参照のこと。

Layout にてオブジェクトを読み込み、カメラを移動させて構図を決める。今回は見上げた画、いわゆるアオリになるようにするため、地表近くにカメラを置いた。

EdgeTracer をシェーダにセットし、ピクセルフィルタへ ToonTracer をセット。今回はオブジェクトのサーフェイス分けを特にしていない。

[unReal Xtreme2 - ToonTracer]設定パネルで出力する線の細かい設定を決める。今回は以下。

出力解像度とカメラ解像度を決める。

そして背景を白にし、【F9】キーでレンダリング。


パースペクティブカメラによる出力画像。3000×2000ピクセルで、レンダリング時間は15秒程度。

次に、先ほどと同じ設定で Shift Camera を使って線画をレンダリングしてみる。[カメラのアイテムプロパティ]のポップアップから[Shift Camera]を選択。

選択すると設定パネルが出るが、今回は特に何もいじらなかった。

そして【F9】キーでレンダリング。


Shift Camera による出力画像。3000×2000ピクセルで、レンダリング時間は15秒程度。

2つの画を並べて比べてみると一目瞭然だが、Shift Camera では縦(垂直方向)のパースが消えており、3点透視図から、カメラビューの表示と同じ2点透視図になっているのがわかる。

最初がパースペクティブカメラ、次がShift Camera。

漫画の背景画ではこのパースの取り方がよく使われるので、この機能が活用できるだろう。LightWave を使っているアニメの現場でも、縦パースが歪まずに真っ直ぐ出るという性質から、この Shift Camera を使用した画が3Dレイアウトに利用されているとのこと。

使用時の注意点としては、カメラを必ず水平に保つようにすること。また、カメラビューの表示(OpenGL プレビュー)の一部が切り取られているような場合には、[編集]>[表示オプション](ショートカット【D】)の[近接クリップ固定]がオフになっているのを確認し、キーボードの【[】【]】キーでグリッドサイズを変更して調整する。

以下、設定パネル各項目について。


  • Vertical Shift
    • 垂直方向(上下)にカメラを移動する。[Use Cam Pitch?]を有効にするとオリジナルのパース補正を行う。
  • Horizontal Shift
    • 水平方向(左右)にカメラを移動する。
  • Focus Item
    • ドロップダウンメニューから任意の焦点平面を選択できる。選択アイテムのXY面から焦点面を作成するので、異なる距離にあるアイテムに対して焦点を常に当て続けられる。焦点面は[Show Focal Plane]を有効化することでレイアウト上に表示される。

なお、v9.6 ユーザー向けの注意点だが、Shift Camera は v9.3 から搭載された機能であるため、解説が v9 のマニュアルに掲載されておらず、マニュアルと同じフォルダに入っている「whats_new_lw96j.pdf」に載っている。

詳細は未確認ながら、v11.5 の Shift camera には、v11.2 までの出力結果とずれるバグがある (?) というような話を公式フォーラムで見つけたが、v11.6 で修正されているのかは不明。

ちなみに、外部で配布されている v9 以降用カメラプラグイン「Perspective Control」も Shift Camera と同じ機能をもつが、32ビット版しか存在しない。