ダイソン球の起源、そして誤解されたイメージ

はじめに

2015年に連星系KIC 8462852に関するニュースが話題となり、ダイソン球という用語をあちこちで目にした。

当時、このニュースに対する反応を色々と眺めながら、ダイソン球のイメージが当初からは異なった形で広まってしまっているのを実感したが、そもそもダイソン球の起源についての詳細な解説がWebに存在しないことも分かったので、改めて事実関係を確認した結果を整理しておく。

ダイソン球とは何か

人類を含む地球上の生命が利用しているエネルギーは、地熱や原子力などを除き、元をたどればそのほとんどは地球に降り注ぐ太陽エネルギーである(化石燃料も過去の太陽エネルギーの蓄積と考えられる)。しかし太陽は全方位にエネルギーを放射し続けており、地球に降り注ぐのはそのうちごくわずか。人類が利用できる量はさらにその一部となる。

そこで、もしも高度な宇宙文明が存在したら、彼らの恒星を取り囲んで、その全放射エネルギーを無駄なく利用するのではないだろうか。さらにそのような文明は最終的に排熱を宇宙空間へ捨てているはずなので、その赤外線放射を観測すれば彼らの存在を確認できるだろう、と1960年にフリーマン・J・ダイソンが主張した。この構想から生まれた想像上の構造物を、彼の名を取って「ダイソン球(Dyson sphere)」と呼ぶ。この気宇壮大なアイデアはのちに多くの宇宙SFで使われたため、現在ではお馴染みのSFガジェットとなっている。

ひとつながりの球殻構造物という誤解

――と、まあここまではよく解説される話だが、おそらく多くの人はダイソン球について、一体となって恒星を完全に覆う堅固な球殻構造物をイメージしているのではないかと思う。ちなみに1992年のTVドラマ『新スタートレック』第130話「エンタープライズの面影(原題:Relics)」ではまさにそのように映像化されており、英語圏でもこのイメージが根付いていることが伺える。

しかし、そもそも提唱者のダイソンが想定していたのはこのような構造物ではなく、現在広まっている概念は誤解の産物なのだが、意外にもSFファンや宇宙ファンにすらあまり知られていない。では、どんな構造物だったのだろうか。

ダイソンの論文

まずはダイソンの論文を読んでみよう。題を訳すなら「人工的な赤外放射源天体の探索」か。誌面では1ページ強の短い論文である。

  • Dyson, Freeman J. "Search for Artificial Stellar Sources of Infrared Radiation." Science 131.3414 (1960): 1667-1668.

歴史的な前提知識として、SETI(地球外知的生命探査)の始まりとされる、ジュゼッペ・コッコーニフィリップ・モリソンによる星間交信電波探索の可能性を示した論文が発表されたのが前年の1959年、そしてフランク・ドレイクオズマ計画を実施したのが1960年の春であることを記しておく。

以下、和訳にミスがあればご指摘を。最初にアブストラクト(要旨)。

If extraterrestrial intelligent beings exist and have reached a high level of technical development, one by-product of their energy metabolism is likely to be the large-scale conversion of starlight into far-infrared radiation. It is proposed that a search for sources of infrared radiation should accompany the recently initiated search for interstellar radio communications.

もし地球外知的生命が存在し、高度な技術開発レベルに達しているならば、そのエネルギー代謝の副産物のひとつとして、星の光を大掛かりに変換した遠赤外線を放射している可能性が高い。このことから、最近始まった星間電波通信の探索と共に、赤外線放射源の探索も行うべきだと提案したい。

続く本文でダイソンはまずコッコーニとモリソンの提案を挙げ、数百万年間も存続する地球外生物が人類を何桁をも上回る技術レベルに達しているなら、その生息地はマルサスの人口の原理から導かれる限界まで拡張されているだろうとする。そしてモデルとして太陽系における場合について、物質供給とエネルギー供給の面から考察している。

At present the material resources being exploited by the human species are roughly limited to the biosphere of the earth, a mass of the order of 5 × 1019 grams. Our present energy supply may be generously estimated at 1020 ergs per second. The quantities of matter and energy which might conceivably become accessible to us within the solar system are 2 × 1030 grams (the mass of Jupiter) and 4 × 1033 ergs per second (the total energy output of the sun).

現在、人類が利用する材料資源は地球生物圏にほぼ限定されており、およそ5 × 1019グラムの質量である。われわれの現在のエネルギー供給量は、多めに見積もって毎秒1020エルグと推定できる。おそらく太陽系内でわれわれが利用できるであろう物質とエネルギーの量は、2 × 1030グラム(木星質量)と毎秒4 × 1033エルグ(太陽の総エネルギー出力)だろう。

同時に、その根拠を述べている。

First of all, the time required for an expansion of population and industry by a factor of 1012 is quite short, say 3000 years if an average growth rate of 1 percent per year is maintained. Second, the energy required to disassemble and rearrange a planet the size of Jupiter is about 1044 ergs, equal to the energy radiated by the sun in 800 years. Third, the mass of Jupiter, if distributed in a spherical shell revolving around the sun at twice the Earth's distance from it, would have a thickness such that the mass is 200 grams per square centimeter of surface area (2 to 3 meters, depending on the density). A shell of this thickness could be made comfortably habitable, and could contain all the machinery required for exploiting the solar radiation falling onto it from the inside.

第一に、人口や工業を1012倍拡大するのに必要な時間は非常に短く、年1パーセントの平均成長率が維持されるなら3000年とされる。第二に、木星大の惑星を分解して再配置するのに必要なエネルギーは、800年間分の太陽放射エネルギーにほぼ等しい1044エルグである。第三に、太陽-地球距離の2倍の位置にて、太陽の周りを回転する球殻状に木星の質量を配置した場合、表面積1平方センチメートルあたりの質量が200グラムとなる厚さになるだろう(厚さは密度に応じて2-3メートル)。この厚みの殻なら快適に居住でき、内側から当たる日射の利用に必要となる全機構を内包できる。

さらにこういう記述があることも覚えておいてほしい。

One should expect that, within a few thousand years of its entering the stage of industrial development, any intelligent species should be found occupying an artificial biosphere which completely surrounds its parent star.

ここからひとつ期待すべきなのは、工業発展の段階に入ってから数千年以内に、その親星を完全に囲んだ人工生物圏を占める知的種族が発見されるはずだ。

そして、そういった生息地として最も可能性が高いのは、表面温度が200~300 Kの地球軌道ほどもある暗い物体であり、これはその内部の恒星と同程度の放射をしているが、波長は約10ミクロン(=マイクロメートル)の遠赤外線域になるという。地球の大気の窓はこの波長域に対して開いており、地上の望遠鏡で観測可能なため、赤外線点光源を探索すべきだと提案している。最後に、放射エネルギーの全てまでは利用していない場合や、多重星の中のある星だけに人工生物圏が存在する可能性についても触れている。

さて、問題の形状についてだが、この中でダイソン自身は「an artificial biosphere which completely surrounds its parent star(その親星を完全に囲んだ人工生物圏)」と書いている。「biosphere(生物圏)」であって 「sphere(球)」ではない。全文を確認してみると、実はこの論文では構造物の形状や数については触れられておらず、「sphere」という単語も出てこない。唯一、「distributed in a spherical shell revolving around the sun(太陽の周りを回転する球殻状に配置)」の箇所で「spherical shell」と表現しているだけである。

忘れ去られたダイソンの補足

ダイソン論文が掲載された翌月、Science 誌は論文に反応してきた3通の手紙と、さらにそれらに対するダイソンの返事を載せている。注目すべきは、このとき寄せられた手紙には明らかに「ひとつながりの球殻構造物」を想定した上での物理的な批判が記されている点である。剪断力、回転応力や重力応力を考えると無理だろうという話や、トーラス形状も考えたがこれも安定ではないという話などである。もちろん前述したように、元論文では構造物の形状や数について触れられていなかったのだが、その発表時から形状を誤解してしまった読者がすでにいたという証左であろう。

そして、これらの手紙に対するダイソン本人からの返信の中で、形状について言及している箇所があるので抜粋する。

1) A solid shell or ring surrounding a star is mechanically impossible. The form of “biosphere” which I envisaged consists of a loose collection or swarm of objects traveling on independent orbits around the star. The size and shape of the individual objects would be chosen to suit the convenience of the inhabitants. I did not indulge in speculations concerning the constructional details of the biosphere, since the expected emission of infrared radiation is independent of such details.

1) 星を取り巻く固い殻やリングは、機械的に不可能である。私が想定していた「生物圏」の形状は、星の周りの独立した軌道を巡る物体の、緩やかなまとまり、または群れから構成される。個々の物体のサイズおよび形状は、居住者の利便性に合うよう選ばれるだろう。私が生物圏の構造的な詳細に関する憶測に入れこまなかったのは、赤外線の予想排出量がそういった詳細に依存しないからである。
Dyson, F. J., Maddox, J., Anderson, P., and Sloane, E. A. "Artificial Biosphere (Letters)." Science 132.3421 (1960): 250-253.

ここから、現在世間に広まっている「ダイソン球」のイメージとは少し違う構造物であることが明確にわかる。おそらく最初の論文に「球殻状」「完全に囲んだ」とあったため、恒星を覆い尽くす巨大な球体の姿を皆が思い浮かべてしまったのだろう。そして木星質量を半径2天文単位の球殻状に配置するというくだりも、あくまで参考用にまんべんなく星を覆った場合の厚みを概算で把握するためで、そのままの構造で建造することは考えていなかったのではないだろうか。加えて、論文自体は広く知られても、少し後に掲載されたこの補足まで把握した人は多くなかったと思われる。

ところで、実は手紙を送ってきた中に、主に経済的な面からのツッコミを入れている Poul Anderson という人物がいるのだが、これは『タイム・パトロール』や『タウ・ゼロ』で知られるSF作家のポール・アンダースンである。

近年の記事

次に、スカラーペディア(専門家が執筆する査読付きオンライン事典)にあるダイソン球の記事(2009年)を読んでみよう。

"A shell of this thickness", he wrote, "could be made comfortably habitable, and could contain all the machinery required for exploiting the solar radiation falling onto it from the inside". This remark gave to readers the misleading impression that the habitat of an alien civilization would be a big round ball with a star at the center. Various science-fiction writers adopted this notion of a big round ball inhabited by aliens and gave it the name "Dyson Sphere". Dyson used the phrase "artificial biosphere" to describe the habitat of an alien civilization. He was well aware that the artificial biosphere could not be a big round ball. A big round ball, whether rotating or not, would be mechanically too weak to support its own weight against the gravity of the star. He imagined the artificial biosphere to be a cloud of inhabited objects orbiting a star, surrounding the star densely enough to absorb all the starlight, but with the orbits carefully arranged so as to avoid collisions.

「この厚みの殻なら」と彼は書いた。「快適に居住でき、内側から当たる日射の利用に必要となる全機構を内包できる」と。この記述が読者に与えたのは、異星文明の生息地がその中心に星をもつ大きな丸いボールになるという誤った印象である。さまざまなSF作家が、異星人の住む大きな丸いボールにこの概念を採用して「ダイソン球」と名付けた。異星文明の生息地を記述するのにダイソンは「人工生物圏」という語を使っている。彼は人工生物圏が大きな丸いボールになれないことをよく理解していた。大きな丸いボールでは、回転していようがいまいが、星の重力に逆らって自重を支持するには機械的に弱すぎるだろう。彼が想像した人工生物圏は星を周回する無数の居住物体で、すべての光を吸収するのに十分な密度で星を取り囲み、その軌道は衝突を避けるよう慎重に配置されているというものである。

Dyson, Freeman J. and Carrigan, Richard "Dyson sphere." Scholarpedia, 4(5) (2009):6647.

この記事の著者はダイソンとなっているが、履歴を見ると実際に書いたのは共著者のリチャード・カリガン(Richard Carrigan)で、ダイソン本人は記事立項直後に招待を受けているだけだ。しかし自分の名で出されている学術的な記事に事実誤認があれば訂正を入れないはずもないので、やはり本人からするとこの記事の認識は大きく間違っていないのだろう。

ダイソンのインタビュー動画

そして極めつけ、ダイソン本人がダイソン球について語っている動画がある。ジャーナリストのロバート・ライトによるダイソンへのインタビュー動画で、ダイソン球の話は20:55頃から。このインタビュー動画の初出はおそらく2001年6月30日の Google Videoで、動画内でもダイソン本人が上記の論文を発表した時期について「40年前のこと」だと言っているので、インタビュー時期は2000年頃と思われる。

動画はYouTubeにも分割されて上がっており、こちらだとダイソン球の話は0:52頃から。


—Okay. Let’s talk a little about the kind of – so you are more science fiction, a musings, what are these Dyson Spheres or Dyson Shells that I heard about?

――なるほど。ではこんなことについて少し話しましょう。あなたのもっとSF的なアイデアで、私が耳にしたことのある、ダイソン球(Dyson Spheres)やダイソン殻(Dyson Shells)というのは何でしょうか?

Well, it was really a joke which is completely misunderstood, but anyway what really happened was 40 years ago, I published a one-page note in the Journal of Science, which was called, “Search for Artificial Sources of Infrared Radiation”. The idea was that, you might have intelligent people in the sky or intelligent creatures who are actually pursuing a vigorous life but won’t interested in communicating. We had just a year before that, Frank Drake had started listening for radio signals from aliens and that was fine as long as the aliens were trying to communicate. But it occurred to me that you might want to detect aliens, even if they were not communicating and there was a way to do it and that would be to look for infrared radiation, which is essentially waste heat. So if there is a society who has suffered a population explosion and is growing very large or has just a very highly developed industry, it is compelled by the laws of thermodynamics to get rid of the waste heat. You can't exist without getting rid of waste heat and that has to be radiated into space. So you will see that heat radiation was infrared. So I suggested that people actually start looking in the sky with infrared telescopes as well as radio telescopes, so that was the proposal. But unfortunately, I added to the end of that the remark that, what we are looking for is an artificial biosphere, meaning by biosphere just a habitat that something that could be in orbit around the neighboring star where the aliens might be living. And so the word biosphere didn't imply any particular shape; however, the science fiction writers then got hold of this and imagined that biosphere means a “sphere”, it has to be some big round ball and so out of that, they came with these weird notions which ended up on Star Trek.

まあ、それは実のところ完全に誤解された冗談なのですが、とにかく実際に起こったのは40年前のことです。Science 誌に「人工的な赤外放射源天体の探索」という1ページのメモを発表しました。そのアイデアというのはこういうものです。天にいる知的宇宙人や、実際に活発な生命を追っている知的生物がいても、通信には関心を持っていないかもしれない。その1年前にフランク・ドレイクが異星人からの無線信号を受信しようと始めましたが、これは異星人側が交信しようとしているなら問題ないのです。しかし私は、たとえ通信していなくても、異星人を見つける方法を思いつきました。本質的に排熱である赤外線放射を探すのです。つまり、人口爆発を経験し、非常に大きく成長していたり、あるいはとても高度に発展した産業を抱えた社会がもし存在したなら、熱力学の法則によって、排熱の除去を余儀なくされるのです。排熱を捨てずにいることはできず、それは宇宙に放射されねばなりません。熱放射が赤外線なのはよくご存じでしょう。だから私は、人々が実際に電波望遠鏡だけでなく赤外線望遠鏡でも空を見てみるよう提案しました。しかし不運にも、私はその最後に、われわれが探すのは「人工生物圏(an artificial biosphere)」であるという意見を加えました。「生物圏」が意味するのは、恒星近傍をまわる軌道に乗る、異星人が生活している生息地ということだけです。そして、生物圏という言葉は特別な形を意味するものではないのです。しかし、SF作家はこれを捉えて、生物圏(biosphere)は「球体(sphere)」を意味するのだと想像しました。元〔論文の意味〕からは離れ、それは大きな丸いボールであるはずだとされました。彼らはこの奇妙な観念を抱き続け、ついには『スタートレック』にまで行き着いたのです。

—Oh, yes, yes. In fact just based on secondary counts, I had imagined some giant sphere whose function was to capture all of the energy of the sun, so that none would go to waste, is that completely erroneous?

――ああ、なるほど。実際、二次的な論拠に基づいて私が想像していたのは、太陽の全エネルギーを無駄なく捕える機能を持った巨大な球体でした。それは全くもって間違いなんですね?

Well, except it shouldn't be a sphere of course, it should have been, but I imagined in fact a swarm of objects surrounding a star and that would be the way to use all the starlight and so it would look essentially from the outside rather like a dust cloud and actually this was invented not by me, but by Olaf Stapledon, the science fiction writer who wrote in the 1930s. So indeed if you really want to give a name to it, it should be the Stapledon Sphere rather the Dyson Spheres.

まあ、それが存在したなら、もちろん球体ではないはずですね。私は星を囲んだ複数の物体の群れを想像していました。それは星の光すべてを使う方法になるので、外部からは実質、むしろ塵の雲のように見えるでしょう。実際これは私の発明ではなくて、SF作家のオラフ・ステープルドンが1930年代に書いた作品によるものです。だから本当にこれに名前をつけたければ、ダイソン球ではなく「ステープルドン球」でなければなりません。

—I think it is too late to make that change. I am afraid that your legacy is inextricably intertwined with…

――それを変えるのは遅すぎですよ。懸念するのは、あなたの遺産がこんがらがることです。

I am sort of stuck with it.

私は多少こだわりますよ。

—In any event, it certainly got your name far and wide, right?

――いずれにせよ、それは間違いなくあなたの名前を大いに広めましたよね?

Yes.

ええ。

—Did they actually use the phrase Dyson Sphere on Star Trek?

――実際に「ダイソン球」というフレーズが『スタートレック』で使われたのですか?

Oh, yes.

ええ、そうです。

—Did they really?

――本当ですか?

One of my daughters sent me a tape of that program afterwards and so I watched it. Oh, yes, it is very clearly labelled and actually it was sort of fun to watch it, but it is all nonsense but it is quite a good piece of cinema.

後日、娘のひとりが番組のテープを送ってくれたので見ました。そう、それは非常にはっきりと名前が付けられていて、実はそこそこ楽しんで見ました。まるっきり荒唐無稽ではありますが、映像作品としてはなかなか良いものです。
Robert Wright interviews: Freeman Dyson - complete interview - MeaningofLife.tv.

誤訳による紛らわしい記述

調べていて、ひとつ気になることがあった。ダイソンの自伝(1979年)の邦訳ではこういう下りがある。

これらの資源を十分に利用するのには、技術的生物は、手にはいるかぎりの物質を使って、恒星の光を十分利用できるように恒星のまわりを回る球殻と、その中に収められた生物学的生活空間と産業設備とを建設せねばならない。土星のような大きさと化学組織をもつ惑星には、太陽と同程度の大きさの恒星の光を十分に利用できる人工の生物圏をつくるのにたりるだけの物質がある。銀河系全体のなかには、すべての恒星のまわりに生物圏をつくるのにたりるだけの惑星はないかもしれないが、この目的にとって十分なだけの利用できる物質資源が他にある。たとえば、赤色巨星の膨張した外皮は、採鉱のため利用することができ、惑星に含まれているよりはるかに多量の物質を供給してくれる。人工生物圏をつくりだすのに必要な機械類を製作することが技術的に実行可能かどうかの疑問は残るが、時間が十分にあれば、それは可能だろう。私は、それが実行可能だという確信を得るために、次のような作業をするのに必要な機械の工学的設計をしてみた。すなわち、地球程度の大きさの惑星を解体し、それを材料にして、太陽のまわりを回る多数の居住可能な球殻を組み立てるという作業である。
フリーマン・ダイソン, 鎮目恭夫 訳,『宇宙をかき乱すべきか ダイソン自伝』筑摩書房, ちくま学芸文庫, 下巻 pp. 138-139, 2006.

恒星の外層も材料として考えているのは興味深いのだが、それはさておき、紛らわしいことに「恒星の光を十分利用できるように恒星のまわりを回る球殻」となっている。これでは邦訳を読むと太陽を包み込む球体を想像してしまいがちだろう。そして「太陽のまわりを回る多数の居住可能な球殻」という記述。この文脈だと太陽を中心にそれを覆う球殻が二重三重に多数重なった姿を想像しがちだが、論文にそんな描写はなかったのでおかしい。ついでながら、土星の質量は論文にあった木星に比べるとそこまで大きくないはず。どうも変だと思い原書を買って確認してみたら、疑問が氷解した。以下がこの箇所の原文。

To exploit these resources fully, a technological species must convert the available matter into biological living space and industrial machinery arranged in orbiting shells around the stars so as to utilize all the starlight. There is enough matter in a planet of the size and chemical composition of Jupiter to form an artificial biosphere exploiting fully the light from a star of the size of our sun. In the galaxy as a whole there may not be enough planets to make biospheres around all the stars, but there are other sources of accessible matter which are sufficient for this purpose. For example, the distended envelopes of red-giant stars are accessible to mining operations and provide matter in quantity far more abundant than that contained in planets. The question remains whether it is technically feasible to build the necessary machinery to create artificial biospheres. Given sufficient time, the job can be done. To convince myself that it is feasible, I have made some rough engineering designs of the machinery required to take apart a planet of the size of the earth and to reassemble it into a collection of habitable balloons orbiting around the sun.

Dyson, Freeman J. Disturbing The Universe. Sloan Foundation Science, Basic Books, p.211, 1979.

邦訳書の訳文「恒星のまわりを回る球殻」は「orbiting shells around the stars」で、球という意味は入っていないはずの「shells」が「球殻」と訳されてしまっている。同じく「太陽のまわりを回る多数の居住可能な球殻」は「a collection of habitable balloons orbiting around the sun」なので、こちらでは「habitable balloons」が「球殻」に訳されている。そして案の定、「Jupiter(木星)」を間違えて「土星」と訳していた。

どうやら訳者は構造物が無数の群れになっているとは思わずに、星の周りをひとつながりの球殻が入れ子状に複数重なったかたちを想像してしまったのではないだろうか。だから「shells」をひとまとめに「球殻」と訳し、「habitable balloons」もこれを見立てた表現として同じ「球殻」と訳してしまったと考えられる。しかし、これまで見てきたダイソンの説明を踏まえると、ここは球殻状に分布した「shell」の群れをなすひとつが「habitable balloon」になっていると考えるべきだろう。

発想源はステープルドン

前述のインタビューでも本人が語っていたが、ダイソンの「人工生物圏」という発想の基になったのは、オラフ・ステープルドンのSF『スターメイカー』Star Maker(1937年)だったという。論文には書かれていないが、自伝にはこうある。

Some science fiction writers have wrongly given me the credit for inventing the idea of an artificial biosphere. In fact, I took the idea from Olaf Stapledon, one of their own colleagues

SF作家たちの一部は、人工生物圏というアイデアを発明した名誉を、誤って私に帰しているが、じつは私はこのアイデアを、彼らの仲間の一人であるオラフ・ステープルドンから得たのである。
フリーマン・ダイソン, 鎮目恭夫 訳, 『宇宙をかき乱すべきか ダイソン自伝』下巻 p. 139, ちくま学芸文庫, 2006.
Dyson, Freeman J. Disturbing The Universe. Sloan Foundation Science, Basic Books, p.211, 1979.

ダイソンは1945年、ロンドンのバディントン駅でボロボロになったこの本を拾ったそうだ。この『スターメイカー』作中には、はるかな距離から眺めた遠未来の銀河の姿が出てくる。

Not only was every solar system now surrounded by a gauze of light traps, which focused the escaping solar energy for intelligent use, so that the whole galaxy was dimmed, but many stars that were not suited to be suns were disintegrated, and rifled of their prodigious stores of sub-atomic energy.

今やすべての太陽系が、知的な利用のために、逃げていく太陽エネルギーを、銀河全体の光量が減退するくらい集中させる光捕獲用の網(ネット)に囲まれていたし、また太陽としては適さない多くの星は解体され、核エネルギーの驚嘆すべき蓄えを奪われたのだった
オラフ・ステープルドン, 浜口稔 訳『スターメイカー』国書刊行会, p. 254, 2004.

Star Maker - Olaf Stapledon - Google ブックス

ということで、ステープルドン『スターメイカー』の「a gauze of light traps(光を捕える網〔ガーゼ〕)」という記述がダイソン球の――正確にはダイソン論文のアイデアの――元ネタである。

本来のダイソン球の姿

これまでの記述から考えるに、本来のダイソン球は以下のようなものである。

その内部に生活空間と産業施設を備えて大気を閉じ込めた居住構造物が、恒星を公転する軌道を無数に独立して巡っている。構造物は緩やかなまとまりや群れとして星を取り囲む球殻状に分布し、全体が人工生物圏として、その星の放射エネルギーを最大限利用している。また、個々の構造物の大きさや形状は居住者の利便性に合わせたものとなっている

これではダイソン球というより、「ダイソン群(Dyson swarm)」などと呼んだほうが的確かもしれない。なお、ダイソンが当初提唱したような形態の構造物を「タイプI」ダイソン球、現状広まっている一体となった形を「タイプII」ダイソン球とする分類もあるが、日本語圏ではあまり知られていない。あくまで個人的な考えだが、もしも分けて書きたいのであれば前者を「ダイソン群」、後者を「ダイソン球」とすれば、あまり混乱を広げずにすむのではないかと思う。

ちなみに、1964年に出版されたフリッツ・ライバー『放浪惑星』The Wanderer 作中に、銀河内の星の光が、その周囲を巡る無数の人工惑星のせいで遮られる光景について登場人物が言及する場面がある。これがダイソン論文以降に出たフィクションのうち、本来の構想に類似したものを最初に描いた作品ではないかと考えられる。

“In the galaxy where the Wanderer grew in orbit, the planets are so thick around each sun they shroud its light and make a slum of space, a teeming city of a galaxy. It is the boast of our engineers, ‘Wherever a sunbeam escapes, we place a planet.’ Or they moor a field , to turn the sunlight back.

“Tens of thousands of planets around each sun, troubling each other with ten thousand tides, so that tidal harmonizing is half our civil engineering. Planets following each other so closely in the same orbit that they make elliptical necklaces, each pearl a world. You know those filigree nests of balls your Chinese carve of ivory, so that you peer and peer to find the center, and end with the feeling that there's a little of infinity locked in there? That's how solar systems look, most places.

“You haven't yet heard this news, simply because of the snaily slowness with which light travels. If you could wait a billion years, you'd see the galaxies grow dim, not by the death of stars, but by the masking and miserly hoarding of their light by the stars' owners.

“All but a tiny remainder of the star-shrouding planets are artificial. Billions of trillions of dead suns and cold moons and planetary gas giants have been mined to get the matter to make them-your Egyptian pyramids multiplied by infinity. Throughout the universe, natural planets are as rare as young thoughts.

“Your own galaxy of the Milky Way is no exception. Planet-choked suns chiefly make the great dark central cloud which puzzles your astronomers.

“A pond can fill with infusoria almost as quickly as a ditch-water puddle. A continent can fill with rabbits almost as swiftly as a single field. And intelligent life can spread to the ends of the universe——those ends which are everywhere——as swiftly as it grows to maturity on a single planet.

[...]

She pointed a claw toward the thick stars. “Those diamonds you see out there are lies. The suns that sent that bright light now are masked.”

「《放浪者》が軌道上で成長した銀河系では、それぞれの太陽のまわりにあまりに多くの惑星が混み合っているために、惑星群が太陽の光をさえぎって、宇宙のスラム街、銀河系の過密都市を作りあげている始末なの。〈太陽光線が洩れているところには残らず惑星を置く〉というのが、わたしたちのエンジニアたちの自慢なのよ。でなければ彼らは太陽光線を追いかえすために、ひとつの場を係留するわ。

「個々の太陽のまわりには何千何万という惑星があって、それぞれの潮汐でたがいに迷惑をかけ合っているために、潮汐の調和がわたしたちの土木工学の半分を占めている状態なのよ。惑星同士が極端に接近して同じ軌道上を回っているので、まるで星ひとつが一粒の真珠に当たる楕円形の首飾りといったところだわ。ほとんどの太陽系がそんなふうになっているのよ。

「あなた方の耳にまだこのニュースが届いていないのは、まるでカタツムリの歩みのようにのろい光の速度のせいなの。もしもあなた方が十億年間待てるなら、星の死滅のせいではなく、星の所有者たちがその光をさえぎってけちけちと貯めこむために、銀河系が暗くなるのが見えるはずよ。

「太陽を覆う惑星群は、ごく一部を除いてすべて人工惑星なの。何兆もの死滅した太陽や冷えきった月や巨大な惑星のガスが、人工惑星の製造原料として使われた――それは地球のエジプトのピラミッドを無限に倍加したほどの量だわ。宇宙全体を通じて、自然惑星はきわめてまれな存在なのよ。

「あなた方の銀河系もその例外じゃないわ。惑星に覆いつくされた太陽群が地球の天文学者たちを惑わす巨大な黒い中心の雲を主として作っている。

「池はどぶの水と同じように、たちまち滴虫類でいっぱいになってしまう。大陸はひとつの野原と同じように、たちまち兎でいっぱいになってしまう。そして知的生命も、ひとつの惑星上で成熟に達するように、たちまち宇宙の果て――いたるところにある宇宙の果てまで拡がってしまうわ。

(中略)

彼女は手をあげて星の群れを指さした。「あすこに見えているおびただしい数のダイヤモンド、あれはみんな嘘なのよ。あの輝かしい光を送りだした太陽は、今はみなマスクで光をさえぎられているんだわ」
フリッツ・ライバー, 永井淳 訳『放浪惑星』東京創元社, 創元SF文庫, pp.405-407, 1973.

The Wanderer - Fritz Leiber - Google ブックス

名称の誕生と誤解の広がり

「Dyson sphere」という名称の誕生と広がりについて気になったので、Google がスキャンした書籍データから英語句の頻度を調べられる Google Ngram Viewer を使い、"Dyson sphere" を1960年(ダイソン論文の掲載年)から上限の2008年までの期間で検索してみた結果が以下。

Google ScholarGoogle Books でも検索してみる。すると、初期には英語圏のいくつかの媒体で「Dyson's sphere」という表記も多少使われていたことが分かる。さらに色々と調べてみると、英語圏だけではなくロシア語圏での広がりも関係してくることが分かったので、時系列で並べてみよう。

まず1962年、ソ連の天文学者でシュテルンベルク天文研究所ヨシフ・シクロフスキーが著書『Вселенная, жизнь, разум(宇宙・生命・心)』の中でダイソンの構想を紹介していて、そこには「сферы Дайсона(ダイソン球)」という表記が確認でき、ロシア語圏ではこの時点でダイソン球という語が使われていたことが分かる(ロシア語圏での初出かどうかは不明)。この中の記述でも、やはり太陽を取り囲む巨大な殻だとされていた。以下は該当箇所だが、ロシア語は分からないので訳文は機械翻訳より(誤りがあればご指摘を)。

Поэтому вполне допустимо считать, что человек в перспективе 2,5-3 тыс. лет создаст «искусственную биосферу» на внутренней поверхности «сферы Дайсона». После реализации этого грандиозного проекта человечество сможет использовать в с ю энергию, излучаемую его «материнской звездой» — Солнцем. Необходимые для утилизации солнечной энергии машины могут быть размещены на поверхности сферы Дайсона или где-нибудь внутри ее.

したがって、2500〜3000年後には未来の人類が「ダイソン球」の内面に「人工生物圏」を作り出すと考えてよい。この壮大な計画を実現した後、人類はその「母星」つまり太陽によって放射されたエネルギーを利用できる。太陽エネルギーの利用に必要な機械は、ダイソン球の表面または内部のどこにでも置ける。
Шкловский И. С. «Вселенная. Жизнь. Разум» 5-е изд. // М.: «Наука», 1980.

翌1963年には、同研究所のヴィクトル・ドミートリイェヴィチ・ダヴィドフ (Виктор Дмитриевич Давыдов) が、プリロダ(Природа)誌に「Сфера Дайсона невозможна(ダイソン球は不可能)」と題した批判記事を発表している。このことから、ダイソン本人の補足まではロシア語圏に伝わっていなかったことがうかがえる。この記事中では「сфера Дайсона(ダイソン球)」が「有名な仮説」として紹介されており、そこで引用されている文献はシクロフスキー著の前掲書である。

そしてさらに翌年の1964年には、またも同研究所のニコライ・カルダシェフが、宇宙文明の発展度に基づいた分類を論文で提唱している。この分類は現在カルダシェフ・スケールと呼ばれ、ダイソン球と関連して語られることが多い。論文は発表された年のうちに英訳されており、そこに「Dyson sphere」という表記が登場している。ロシア語で書かれた元の論文も入手して確認してみた。

II — цивилизация, овладевшая энергией, излучаемой своей звездой (например, этап построения «сферы Дайсона» [6]); энергопотребленне ∼4⋅1033 эрг/сек.

II — a civilization capable of harnessing the energy radiated by its own star (for example, the stage of successful construction of a "Dyson sphere"[6]); energy consumption at ≈4 × 1033 erg/sec.
II — 自らの星の放射エネルギーを利用できる文明(例えば「ダイソン球」建造の達成段階[6]); エネルギー消費量は約4×1033エルグ/秒である。
Kardashev, N. S. "Transmission of Information by Extraterrestrial Civilizations." Soviet Astronomy 8 (1964): 217-221.
Кардашев Н.С. «Передача информации внеземными цивилизациями» // Астрономический журнал. 1964. Т. 41. Вып. 2. С. 282-287.

いわゆるタイプII文明について書かれたこの文の「сферы Дайсона」が英訳されて「Dyson sphere」と表記されたものが、現時点で遡れた最も古い英語表記なのだが、これが英語圏における初出なのだろうか。なお原文だと「сфера」の語尾が「-ы」となっていて複数形なので、律儀に英訳すると「Dyson spheres」となるような気がする。

1966年には、シクロフスキーによる前掲書が、英訳された上にカール・セーガンが共著者として加わり大幅に加筆改訂され、Intelligent Life in the Universe というタイトルで出版された。この本で「Dyson sphere」と表記されて紹介されたことが、英語圏で一般にも広まったきっかけとして大きかったのではないかと個人的に推測している。

ではさらに、ひとつながりの球殻構造物として最初に描写したフィクションは何だったのだろうか。星を囲んだ固体の殻とその内壁の居住面という構造を最初に描写したSFは、ロバート・シルヴァーバーグAcross a Billion Years(1969年)だとされ、以下に示すとおり作中に「Dyson sphere」という台詞も出てくる。ただし、発表がダイソンの元論文から9年後なので、これ以前のフィクションに遡れる可能性もあることは付言しておく。

“[...] According to communications received on this planet 13,595,486 years ago, the Mirt Korp Ahm embarked on a project at that time for the transformation of their home system into an enclosed sphere permitting full utilization of the solar energy. An uninhabited planet of the system was used as the source of mass for this project. The enterprise was successfully completed within a period of 150 years after receipt of first notice here. Thereafter, naturally, the home star of the Mirt Korp Ahm ceased to be detectible by conventional optical means.”

I pondered the meaning of that set of cloudy phrases without much immediate success. But to Saul Shahmoon the robot’s explanation was lucidity itself. “Of course!” Saul cried. “A Dyson sphere!”

[...]

A really thrifty civilization, Dyson said, would catch all of its sun’s energy before it was squandered. One way to do it, he suggested, was to demolish Jupiter and use its mass to build a shell surrounding the sun at approximately the distance of Earth’s orbit from the center of the solar system. Smashing up the biggest planet and rearranging its pieces this way would take a fair amount of energy all by itself: roughly as much as the sun’s total output for eight hundred years. But once the job was finished, the shell would intercept every photon of energy coming from the sun; this could be put to use as an all-purpose power source.

「(中略)13,595,486年前にこの惑星から受け取った通信によると、マート・コープ・アームは当時、太陽エネルギーを完全利用できる球で故郷の星系を閉じ込めるよう改造する計画に着手しました。その星系の無人惑星が、この計画の質量供給源として利用されました。この事業はこちらが最初の知らせを受信してから150年のうちに無事完了しました。その後、当然ですが、マート・コープ・アームの故郷の星は、従来の光学的手段では検出されなくなりました」

僕はそのはっきりしない言い回しの意味がすぐに分からず考えた。しかし、サウル・シャームーンにとってロボットの説明は明快だった。「そうか!」サウルは叫んだ。「ダイソン球だ!」

(中略)

ダイソンが言うには、本当に倹約的な文明は、浪費される前に太陽の全エネルギーを捕えるのだ。彼が提案したひとつの方法は、木星を破壊してその質量を使い、太陽系の中心から地球軌道までの距離で太陽を囲んだ殻を作るというものだ。最大の惑星を砕いてそのように配置を変えるのは、それだけでかなりエネルギーを使うことになる。だいたい太陽の総出力のおよそ800年間ぶんだ。しかしその作業が終われば、殻は太陽から来るエネルギー光子すべてを遮断する。これは多目的なエネルギー源として利用できる。

Silverberg, Robert Across a Billion Years. Open Road Media Sci-Fi & Fantasy, 2013.

Across a Billion Years

Across a Billion Years

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そしてダイソン論文から10年後、1970年にラリイ・ニーヴンの代表作となるSF『リングワールドRingworld が出版され、ダイソン球に対する新たなアプローチが世に広まるわけだが、それはまた別の話となる。

ところで、こちらは現時点までの「Dyson sphere」についてのGoogleトレンドグラフだが、冒頭に紹介したKIC 8462852のニュースが流れた2015年10月に突如跳ね上がっているのが分かって面白い。

追記1

KIC 8462852の件は、やはりというか、ダイソン球などの人工構造物ではなかったという説明に落ち着きそうである。

追記2

1960年5月9日にフリーマン・ダイソンが件のダイソン球論文についてロバート・オッペンハイマーへ宛てた手紙を、息子のジョージ・ダイソンがMastodonに上げていた。なお論文が掲載されたのはこの後のScience誌1960年6月3日号である。

Dear Oppenheimer

What do you think of this? It is certainly not Advanced Study, and yet it seems to me it is not quite crazy either.

Would you have objections if I tried to publish in "Nature" or in "Science"?

Perhaps the effect would be better if the title were changed to "Search for Point Sources of Infrared Radiation" or something similarly unsensational.

Freeman.

これについてどう思いますか? 確かに高度な研究ではありませんが、それほど変なものでもないような気がします。

私が『Nature』や『Science』に投稿しようとしたら反対されますか?

タイトルは「赤外線放射点源の探索」みたいにセンセーショナルではないものに変えた方が効果的かもしれません。

George Dyson: "Freeman J. Dyson to J. Robert …" - Science Mastodon

そして2009年にモスクワのレベデフ物理学研究所で、フリーマン・ダイソン(右のサインをしている人物)とニコライ・カルダシェフ(左)が共にいる写真も上げていた。

追記3

参考


最終更新日:2023-05-28