『コンディション・ズールー:宇宙戦闘における兵器と防御』発行

2023年8月に開催されるコミックマーケット102(C102)にサークル参加します。2日目(8月13日・日曜日)東プ37b「スタジオ100光年」です。

これまでに続いて、宇宙×SF×科学なエッセイの翻訳同人誌第3弾を出します。科学的・ハードSF的な観点から宇宙戦闘兵器について語った内容です。

頒布物

ケン・バーンサイド『コンディション・ズールー:宇宙戦闘における兵器と防御』
Condition Zulu: Weapons and Defenses in Space Combat
2023年08月13日初版第1刷発行/A5判/68ページ(表紙含)/頒価1,000円/発行元:スタジオ100光年

原著の初出は2016年で、個人出版の電子書籍として販売されています。同人誌としての発行ですが、これまでと同様に著者と契約して、正式に翻訳権と日本語版出版権を取得しています。

以下に目次情報を載せておきます(追記:以下は第2刷以降のもので、第1刷とはページが少し変わっています)。

07……アナロジーの問題点

07……船を壊すもの

09……宇宙におけるレーザー

14……粒子ビーム

18……プラズマ兵器

19……核爆発

20……核爆弾励起X線レーザー

21……運動エネルギー衝突体

27……運動エネルギー兵器が衝突したら?

29……相対論的衝突体

32……ミサイル対ビーム

34……宇宙戦闘機とその任務

36……その他の宇宙戦闘ミッション

37……全てをまとめる

38……航行権

61……訳者解説

本書後半には短編小説「航行権」”Right of Passage” が収録されているため、前2作よりもページ数が多くなっています。この短編は著者自身の会社で制作・販売している宇宙戦闘ミニチュアゲーム Attack Vector: Tactical の世界を舞台としており、ゲーム付属の設定書に掲載されているものを加筆修正した作品です。

なお、原著は電子版しか存在しませんが、原著者のケン・バーンサイド(Ken Burnside)氏自身が運営するボードゲーム・ミニチュアゲーム制作会社 Ad Astra Games 社のWebサイトから購入できます。

翻訳に際しての参考文献

修正情報

※2023-10-27更新

特に重要な項目はページ数を太字にしてあります。

初版第1刷→第2刷での主な修正点
  • 表1 タイトル文字サイズを修正。(なお、第1刷の表1画像はこちら
  • p. 11「硬紫外線」に脚注追加。『硬紫外線(hard UV):紫外線のうち波長の短いもの。日本語だと遠紫外線というほうが一般的かもしれない。大気中の酸素分子や窒素分子に吸収されるため地表には到達せず、真空状態でないと透過しないため真空紫外線ともいう。』
  • p. 16 脚注「太陽風(荷電粒子のプラズマ)を作る人工的な磁場によって偏向させることで」→「太陽風(荷電粒子のプラズマ)を人工的な磁場によって偏向させることで」
  • p. 22「120度以上で衝突すると、厳しい追撃をかわして標的速度を50%減らし、150度では標的速度を86%減らし、180度では標的速度のすべてを減らす。」→「120度以上ずれて衝突するものは、後方から激しい追撃で勝利したわけで、標的の速度の50%を自分の速度から差し引く。150度ずれて衝突するものは、標的の速度の86%を引き、180度ずれて衝突するものは、標的の速度のすべてを引く」
  • p. 23「標的が静止していると仮定して、発射船のベクトルに標的の全ベクトルを足してから」→「標的が静止していると仮定して、標的の全ベクトルから発射船のベクトルを引いてから」
    • 土壇場で気がついたので第1刷の脚注で疑義を呈しましたが、その後原著者に確認したところ、やはりここはミスでした。
  • p. 28「ミサイルのことだ)には、子弾を搭載した」→「ミサイルのことだ)は、子弾を搭載した」
  • p. 32 「海軍における実用性と」→「宇宙海軍における実用性と」
  • p. 38 9行目と10行目の間(「イエス・サー」の直後)に『「貴官の氏名、階級、および〈ウォースパイト〉乗艦時の所属を述べよ」』の一文が抜けているので入れる。
  • p. 46「椅子で伸びをしていた」→「椅子で伸びていた」
  • p. 52「推力二分の一Gに落としてこれを維持、針路そのまま。」→「推力二分の一Gに落としてこれを維持。」
  • p. 52「理想的な航続距離」→「理想的な距離」
  • 全般「ニュー・バーラタ」→「ニュー・バーラト」に修正。
  • 「運動エネルギー衝突体」の項に第2刷より図版を挿入。

補足1

「運動エネルギー衝突体」の項の「真正面から30度ずれた角度で入ってくる衝突体は、衝突時にその速度の86%を与えるわけだ。同様に60度ずれたものは、速度の50%しか与えず、90度ずれているものはゼロになる」は \displaystyle\cos 30°=0.866\displaystyle\cos 60°=0.5\displaystyle\cos 90°=0 ということからきています。その次の文も同様に \displaystyle\cos 120°=-0.5\displaystyle\cos 150°=-0.866\displaystyle\cos 180°=-1 ということからきています。分かりづらいので第2刷から以下の図を入れました。

物体AとBの衝突。vはそれぞれの速度、θは衝突角。

補足2

「運動エネルギー衝突体」の項の「標的が静止していると仮定して、標的の全ベクトルから発射船のベクトルを引いてから、運動エネルギー兵器が発射機構から与えられる速度を足す」について。分かりづらいので第2刷から以下の図を入れました。

発射船から標的への砲撃ベクトルの図(実際は三次元となる)。

補足3

Attack Vector: Tactical の世界は太陽から半径10パーセク(32.6光年)の範囲にわたっているため〈十世界〉(テンワールズ)と呼ばれます。この3Dマップ(WebGL)が以下で公開されているので紹介しておきます。「Alpha」から「Epsilon」まであるのは、超空間航法(ハイパードライブ)のレベルで、作中の時代が進むにつれてレベルが上がり、遠方への跳躍ができるようになっていったという設定です。

なお、この世界の超空間航法(ハイパードライブ)は恒星から1/4天文単位以内に存在するポイント「トランジット・ノード」でしか使えないため、あくまで恒星間移動でのみ利用でき、星系内では使えないという設定となっています。これによって、全体としては太陽系以外のさまざまな星系や惑星を提示しつつ、通常推進をベースにしたハードSF的展開を実現できる舞台を成立させています。

補足4

短編「航行権」に出てくる艦船の具体的な形状については、以下のリンク先にある、著者の会社が販売しているミニチュアの画像を見ていただくとよいでしょう。〈ウォースパイト〉はワスプ級高速攻撃駆逐艦(Wasp Class Fast Attack Destroyer)の7番艦です。〈サラディン〉のアル=ラフィク級は正式にはホスニ・アル=ラフィク級多用途戦闘艦(Hosni al‑Rafik Multi-Role Fighter)という設定です(メディナ宇宙軍では、フリゲートサイズの宇宙軍用艦をFighterと呼称)。これらのミニチュアは放熱板を展開していないようですが、展開した絵は、例えばエッセイ第1作『熱い方程式』の原著カバーイラストなどで見ることができます。

これらゲーム内に出てくる艦船のさらに詳細な設定は、Attack Vector: Tactical (2nd Edition) Ship Book 1 に掲載されています。

通信販売

2023-08-17

通販を開始します。購入希望の方は以下のBOOTHよりお願いいたします。

前2作について

エッセイ第1弾『熱い方程式:熱力学とミリタリーSF』と第2弾『うつろう物体:作家のための軌道力学』の情報については以下を参照してください。