『熱い方程式:熱力学とミリタリーSF』発行

2019年末に開催されるコミックマーケット97(C97)にサークル参加します。3日目(12月30日・月曜日)南ミ36a「スタジオ100光年」です。

宇宙×SF×科学なエッセイの翻訳本を同人誌として発行します。宇宙戦闘と熱の話についてハードSF的な観点から語った内容です。

頒布物

ケン・バーンサイド『熱い方程式:熱力学とミリタリーSF』
The Hot Equations: Thermodynamics and Military SF
2019年12月30日初版第1刷発行/A5判/34ページ(表紙含)/頒価500円/発行元:スタジオ100光年

本作の初出は2014年で、2015年ヒューゴー賞関連作品部門最終候補作になっています。同人誌としての発行ですが、著者と契約して正式に翻訳権と日本語版出版権を取得しています。

原著者への問い合わせや伝熱の専門家による助言を反映し、この邦訳版では全編に渡って注釈で解説を加えたので、原著よりもずっと理解しやすくなっているはずです。

以下に目次情報を載せておきます。

06……熱力学とあなた

08……センサー環境としての宇宙空間

11……宇宙船の検知

14……ありがちだが変な推進システム

15……ロケットの基礎

18……電磁ロケットと熱力学ロケット

18……セイル

19……軌道力学の制約

20……設定を構築する

21……ΔVと海賊行為

23……宇宙戦闘

26……大規模な軍事行動

27……おわりに

28……訳者解説

なお、原著は電子版しか存在しませんが、原著者のケン・バーンサイド(Ken Burnside)氏自身が運営するボードゲーム・ミニチュアゲーム制作会社 Ad Astra Games 社のWebサイトから購入できます。

初出は以下のミリタリーSFアンソロジー(電子書籍のみ)です。

翻訳に際しての参考文献

  • 石津陽平『The Aerospace Engine Review Vol. 3 Project Rover/NERVA』推進器研究会, 2013.(同人誌)
  • 安 成弘, 若林宏明, 岡本芳三, 棚次亘弘, 「ガス炉心炉(1)―ロケット推進用―」『原子力工業』, 日刊工業新聞社, Vol. 23, No. 11, pp. 23-28, 1977.
  • 安 成弘, 若林宏明, 「ガス炉心炉(2)」『原子力工業』, 日刊工業新聞社, Vol. 23, No. 12, pp. 65-70, 1977.
  • 秋野詔夫, 滝塚貴和, 岡本芳三, 「ガス炉心炉(3)」『原子力工業』, 日刊工業新聞社, Vol. 24, No. 1, pp. 36-40, 1978.
  • 安 成弘, 若林宏明, 滝塚貴和, 秋野詔夫, 岡本芳三, 「ガス炉心炉(4)」『原子力工業』, 日刊工業新聞社, Vol. 24, No. 2, pp. 48-52, 1978.
  • ロバート・A・ハインライン『宇宙船ガリレオ号』Rocket Ship Galileo, 山田順子=訳, 東京創元社, 創元SF文庫.
  • ロバート・A・ハインライン『宇宙の呼び声』The Rolling Stones, 森下弓子=訳, 東京創元社, 創元SF文庫.
  • ロバート・A・ハインライン『宇宙(そら)に旅立つ時』Time for the Stars, 酒匂真理子=訳, 東京創元社, 創元SF文庫.
  • ロバート・A・ハインライン「血清空輸作戦」"Sky Lift", 矢野 徹=訳, 早川書房, ハヤカワ文庫SF『時の門』所収.

修正情報

※2022-05-10更新

特に重要な項目はページ数を太字にしてあります。

初版第1刷→第2刷での主な修正点
  • p. 11「人間の乗組員は船内のあちこちで室温を必要とし、それは地球軌道の黒体再放射温度より30~40 Kも暖かい。」の「黒体再放射温度」に注釈を追加。『黒体再放射温度:黒体放射温度ではなく黒体「再」放射温度となっているのは、宇宙船が地球周回軌道にいる場合、地球からのエネルギー放射(赤外線)を受けて吸収し、それをさらに放射するため。』
  • p. 16 第3段落4行目「量として使っていた。 亜鉛の原子量は65程度だが」の箇所、「亜鉛」の直前にある不自然なスペースを削除。
  • p. 21 「3Dプリントの幅広い活用は、兵站という、軍事作戦における大きな制約の1つが解決するかもしれない。」→「3Dプリントの幅広い活用、兵站という、軍事作戦における大きな制約の1つ解決するかもしれない。」に修正。
第2刷→第3刷での主な修正点
  • p. 14 「太陽周回軌道を脱出し」→「太陽周回軌道から外れ」に変更。
  • p. 15 「5ミリGは、太陽周回軌道から外れ、太陽系内の2点間を直接推進するのに必要な最小推力である。」に脚注を追加。『著者が以前計算してプロットした結果によると、5~8ミリG の一定加速度を数週間持続すれば、太陽系内のほぼすべての軌道遷移において最短時間軌道(後述)を取れるらしい。』
  • p. 15 「比推力は、ロケットの燃料タンクを空にしたときの質量と満タンに燃料を入れたときの質量の割合と自然対数との比で、ロケットの燃費の尺度であり、秒の単位で表される。」の文を削除。ロケットの質量比と自然対数で記されるのはΔVなので、この文自体が間違いです。完全に見落としました……。直後にΔVの話が出てくるので、原著執筆時の取り違いでしょう。原著者にはミスの指摘と削除について連絡済みです。
  • p. 17「5ミリGの比推力さえ得られれば,」→「5ミリGさえ得られれば、」に修正。比推力ではない。
  • p. 23「〈十世界〉」→「〈10世界〉(テン ワールズ)」に修正して脚注を追加。『当該ゲーム内では太陽から10パーセク(32.6光年)以内の星々を舞台としており、その世界をこう名付けている。』
  • 全般「m/sec」「km/sec」を「m/s」「km/s」に統一。
第3刷→第4刷での主な修正点
  • p. 6「ロバート・H・バロウ将軍、アメリカ海兵隊総司令官、1980」→「ロバート・H・バロウ大将、アメリカ海兵隊総司令官、1979」に修正。改めて調査したところ、年が間違っていたことが判明。原著者にも連絡済み。

補足

「5ミリGは、太陽周回軌道から外れ、太陽系内の2点間を直接推進するのに必要な最小推力である。」という文の根拠について原著者へ質問した回答が以下です。第3刷以降では脚注として簡単に追加しています。

また、おまけで付けていた協力者執筆の補足ペーパー「もう少し熱い方程式:なぜ発電機温度の75%で稼働する放熱板が最適なのか」(下の画像)ですが、残部もなくなったので以下よりPDFで公開しておきます(執筆者には許諾済み)。

今後の情報

2019-12-30

C97では昼過ぎに完売という予想外の事態になりました。ありがとうございました。今後ですが、増刷して2020年2月のCOMITIA131に出る予定です。また、3月に開催される東京とびもの学会 2020大会と、5月に予定されているC98にも申し込むことにしました。COMITIA131で在庫が余れば通販も考えていますが、その形態は検討中です。よろしくお願いいたします。

2020-04-17

新型コロナウイルス感染症のため、東京とびもの学会 2020大会は2020年7月19日へ延期、C98は当選していましたが開催中止となりました。本サークルの即売会参加は今後の各開催状況によります。

通信販売

2020-02-10

COMITIA131用に増刷した同人誌の在庫が手元に来たので通販を開始します。BOOTHにショップを開いたので、購入希望の方は以下よりお願いいたします。

2015年のヒューゴー賞について

余談ですが、この作品が関連作品部門の最終候補作となった2015年は、ヒューゴー賞を巡って騒動が起きました。それについては以下の記事で解説しています。

続刊

2021年に第2弾『うつろう物体:作家のための軌道力学』も発行しました。以下を参照してください。

2023年に第3弾『コンディション・ズールー:宇宙戦闘における兵器と防御』も発行しました。以下を参照してください。